2015年12月11日金曜日

田舎の出来事

 
今日、北九州からマッサージ機を豊前市まで運んだんだけど、配送先はすごい田舎と聞いていた。
そこは、僕の奥様の実家の近くで、したがって、どのくらい田舎なのか、ある程度は知っていた。
着いたら、助手のT君が「言うほど田舎じゃないじゃないすか」と言う。
「そう?」
 
そう答えたとき・・。
 
ピーっとなにやら泣き声がしたので、「なんだろう?」と声のほうへ行ってみると・・。
 
家と家の間の隙間になんと、立派な角を生やした鹿が倒れて、獰猛そうな犬が二匹、唸りながら首筋に噛み付いている。
 
呆気にとられて、その光景を見ていると、鉄砲を構えたおじさんが走ってやってきた。
 
それでやっと、おじさんが猟師で、犬が猟犬だということがわかった。
 
鹿は虫の息だが、ときどき、鋭い鳴き声をあげる。
 
「どうしようかのう。ここで鉄砲は撃たれんしのう・・」
おじさんはそう呟き、足元にあった大きな石を拾い上げた。
そして、鹿に近づく。
 
おじさんが無表情で石を振り上げたとき、僕とT君は顔を背けた。
 
鈍い音がして、鹿の断末魔の鳴き声が、ひときわ高く、あたりにこだました。
 
この殺戮を目の当たりにして、T君は呟いた。
 
「正真正銘の田舎っすね、ここ・・」
 
 
 

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